『プロミシング•ヤング•ウーマン』(2020)★★★★☆

★★★★☆

医大を中退しコーヒーショップで働くキャシーが性暴力を受けた末に自殺した親友のニーナのために性暴力加害者および関係者に対して復讐を行うというストーリー。

英語圏ではpromising young manはよく使われる表現なのに対してpromising young womanというのは一般的ではないようで、もうタイトルから男性優位社会への一石を投じてる。
テーマ的に性暴力という重いものであるにも関わらず、ポップで毒々しい感じと印象的な音楽ではじめからこの作品のオリジナリティを強く感じた。そして、性暴力や性差別的なことがまかり通ってる現実というのに対して被害者の気持ちや将来はなんだと思ってるのか、というメッセージが半ば暴力的なくらい激しく伝わっててなかなか観るのはこたえたな。

キャシーの年齢の割には少女っぽいファッションや好みは事件が起きた大学生時代から時が止まっていることを意味しているのだろうか。キャシーとニーナ両方合わさるとハートになるネックレス、復讐の時はニナのネックレスをしてる。キャシーにとってニーナは自分の一部のような存在なんだろうな。キャシーの遺体を燃やされた後に残ったネックレスはニーナと刻印されたものだった。ニーナが亡くなってしまった時点でキャシーは自分が死んでしまったように感じているのかもしれない。どん底の絶望。そんな中でキャシーが着実に復讐を遂げていく姿は痛快な側面はあるけど、彼女がまとう怒りや悲しみの雰囲気が悲しくてみていて辛い。
愛する人のためなら何だってするキャシー。彼女が「正しく」する方法がそれでいいのか、と鑑賞後も何度も考えてしまう作品だった。
いや、キャシーのやり方はよくないと思うのだけど、ならば私たちはどのようにこれらの差別や暴力に立ち向かえるのかということがはっきりと言えないもどかしさがずっと胸に残ったままなのだ。

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